「………んっ…」
ゆっくり目を開ければ、視界に入るのは…緑の芝生。
起き上がり、周囲を確認するよう視線を動かす。
「天国…?」
死後の世界なんてものがあるとは思わなかったけれど、これがそうなんだろうか。
それとも、これは…夢?
立ち上がろうと足に力をいれる。
「っ!」
がくりと崩れた原因へ目を向けると、足首が赤く腫れている。
そこに手を添えると、じんじんした痺れるような痛みと熱を感じた。
「どうして…」
自分は ――― 飛び降りた…はず
これが夢なら…痛みはない、はず
でも、それもこれも仮定でしかない。
だって自分は死んだこともないし、夢ならば痛みを感じないというのも…聞いたことがあるだけで、体感したことはない。
では、ここは一体…?
立ち上がれない身体を、落ちていた棒切れで支え、亀並みの速度で道らしき道の方へ歩いていくと…目の前を、歩く ――― 人 ――― っていうか…な、に…あれ?
「……あれ」
こっちに気づいて近づいてくる…男の子。
少年らしい顔…は、いいとして、なに?
「なんだお前」
目の前に立ち止まり、神妙な顔つきで顔をじろじろ上から下まで見られる。
けれど、自分はそれよりも彼のとある1点を、瞬きもせずに見てしまう。
頭から生えている…らしい、真っ白な長い、耳
「お前…チェシャ猫に連れられて来たのか」
「は?」
突然、チェシャ猫という単語を言われ、反応が遅れる。
そこで初めて、耳ではなく目の前の彼の瞳を見た。
人とは、違う……まるで、動物のような、目
「おい!聞いてるのか!」
「え、あ、いえ!ごめんなさい!」
迫力に負けて謝ってしまうと、彼は大きくため息をついてもう一度同じ質問を繰り返した。
「お前…チェシャ猫に連れられて来たのか」
「チェシャ…猫?」
「そう。猫だよ、猫!そいつに連れられて、ここに来たのかって聞いてるんだよ」
「ね、猫っていうか、気づいたらここにいるっていうか、自分でもどうしてここにいるかわからないっていうか…」
――― 寧ろこっちが色々教えて頂きたい
「…ふーん、じゃあニャンコが連れてきたわけじゃないのか…って事は、お前、落ちてきたんだな」
「おちて…来た…?」
「そ。たまにいるんだよ…まいいや、とりあえず来いよ。手当てしてやる」
「え?」
「足、そのままじゃ歩けないだろ」
「あ、ありがとうございます」
「僕の家そこだから、とっとと来いよ」
そういうと、男の子は足取りも軽く…小さな家に入って行った。
着いて行っていいのか悪いのか。
でも、今のあたしはそんなことどうでも良かった。
オチテキタ…
確かに彼はそう言った。
…ということは、ここは…アノヒトのいる、世界じゃない。
ここが夢でも現実でも…
天国だろうと地獄だろうとなんでもいい、どこでもいい。
ただ、アノヒトがいない世界であれば…アタシ自身どこにいても、構わない
Are you Alice? - blot. #02
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